文档详情

河童芥川龙之介

杏**
实名认证
店铺
DOCX
36.57KB
约17页
文档ID:298316000
河童芥川龙之介_第1页
1/17

河童芥川龙之介河童芥川龙之介(一)芥川龙之介 - 河童 河童 どうか Kappa と発音してください 芥川龍之介 序 これはある精神病院の患者、――其次十三号がだれにでもしゃべる話である彼はもう三十を越しているであろうが、一見したところはいかにも假设々しい狂人である彼の半生の経験は、――いや、そんなことはどうでもよい彼はただじっと両膝〔りょうひざ〕をかかえ、時々窓の外へ目をやりながら、〔鉄格子〔てつごうし〕をはめた窓の外には枯れ葉さえ見えない樫〔かし〕の木が一末、雪曇りの空に枝を張っていた〕院長のS博士や僕を相手に長々とこの話をしゃべりつづけたもっとも身ぶりはしなかったわけではない彼はたとえば「驚いた」と言う時には急に顔をのけぞらせたりした…… 僕はこういう彼の話をかなり正確に写したつもりであるもしまただれか僕の筆記に飽き足りない人があるとすれば、東京市外××村のS精神病院を尋ねてみるがよい年よりも假设い其次十三号はまず丁寧〔ていねい〕に頭を下げ、蒲団〔ふとん〕のない椅子〔いす〕を指さすであろうそれから憂鬱〔ゆううつ〕な微笑を浮かべ、静かにこの話を繰り返すであろう。

最後に、――僕はこの話を終わった時の彼の顔色を覚えている彼は最後に身を起こすが早いか、たちまち拳骨〔げんこつ〕をふりまわしながら、だれにでもこう怒鳴〔どな〕りつけるであろう――「出て行け! この悪党めが! 貴様も莫迦〔ばか〕な、嫉妬〔しっと〕深い、猥褻〔わいせつ〕な、ずうずうしい、うぬぼれきった、残酷な、虫のいい動物なんだろう出ていけ! この悪党めが!」 一 三年前〔まえ〕の夏のことです僕は人並みにリュック・サックを背負い、あの上高地〔かみこうち〕の温泉宿〔やど〕から穂高山〔ほたかやま〕へ登ろうとしました穂高山へ登るのには御承知のとおり梓川〔あずさがわ〕をさかのぼるほかはありません僕は前に穂高山はもちろん、槍〔やり〕ヶ岳〔たけ〕にも登っていましたから、朝霧の下〔お〕りた梓川の谷を案内者もつれずに登ってゆきました朝霧の下りた梓川の谷を――しかしその霧はいつまでたっても晴れる风光〔けしき〕は見えませんのみならずかえって深くなるのです僕は一時間ばかり歩いた後〔のち〕、一度は上高地の温泉宿へ引き返すことにしようかと思いましたけれども上高地へ引き返すにしても、とにかく霧の晴れるのを待った上にしなければなりません。

といって霧は一刻ごとにずんずん深くなるばかりなのです「ええ、いっそ登ってしまえ」――僕はこう考えましたから、梓川の谷を離れないように熊笹〔くまざさ〕の中を分けてゆきました しかし僕の目をさえぎるものはやはり深い霧ばかりですもっとも時々霧の中から太い毛生欅〔ぶな〕や樅〔もみ〕の枝が青あおと葉を垂〔た〕らしたの も見えなかったわけではありませんそれからまた放牧の馬や牛も突然僕の前へ顔を出しましたけれどもそれらは見えたと思うと、たちまち濛々〔もうもう〕とした霧の中に隠れてしまうのですそのうちに足もくたびれてくれば、腹もだんだん減りはじめる、――おまけに霧にぬれ透〔とお〕った登山服や毛布なども並みたいていの重さではありません僕はとうとう我〔が〕を折りましたから、岩にせかれている水の音をたよりに梓川の谷へ下〔お〕りることにしました 僕は水ぎわの岩に腰かけ、とりあえず食事にとりかかりましたコオンド・ビイフの罐〔かん〕を切ったり、枯れ枝を集めて火をつけたり、――そんなことをしているうちにかれこれ非常はたったでしょうその間〔あいだ〕にどこまでも意地の悪い霧はいつかほのぼのと晴れかかりました。

僕はパンをかじりながら、ちょっと腕時計〔どけい〕をのぞいてみました時刻はもう一時二非常過ぎですが、それよりも驚いたのは何か気味の悪い顔が一つ、円〔まる〕い腕時計の硝子〔ガラス〕の上へちらりと影を落としたことです僕は驚いてふり返りましたすると、――僕が河童〔かっぱ〕というものを見たのは実にこの時がはじめてだったのです僕の後ろにある岩の上には画〔え〕にあるとおりの河童が一匹、片手は白樺〔しらかば〕の幹を抱〔かか〕え、片手は目の上にかざしたなり、珍しそうに僕を見おろしていました 僕は呆〔あ〕っ気〔け〕にとられたまま、しばらくは身動きもしずにいました河童もやはり驚いたとみえ、目の上の手さえ動かしませんそのうちに僕は飛び立つが早いか、岩の上の河童へおどりかかりました同時にまた河童も逃げ出しましたいや、おそらくは逃げ出したのでしょう実はひらりと身をかわしたと思うと、たちまちどこかへ消えてしまったのです僕はいよいよ驚きながら、熊笹〔くまざさ〕の中を見まわしましたすると河童は逃げ腰をしたなり、二三メエトル隔たった向こうに僕を振り返って見ているのですそれは不思議でもなんでもありませんしかし僕に意外だったのは河童の体〔からだ〕の色のことです。

岩の上に僕を見ていた河童は一面に灰色を帯びていましたけれども今は体中すっかり緑いろに変わっているのです僕は「畜生!」とおお声をあげ、もう一度河童〔かっぱ〕へ飛びかかりました河童が逃げ出したのはもちろんですそれから僕は三非常ばかり、熊笹〔くまざさ〕を突きぬけ、岩を飛び越え、遮二無二〔しゃにむに〕河童を追いつづけました 河童もまた足の早いことは決して猿〔さる〕などに劣りません僕は夢中になって追いかける間〔あいだ〕に何度もその姿を見失おうとしましたのみならず足をすべらして転〔ころ〕がったこともたびたびですが、大きい橡〔とち〕の木が一末、太ぶとと枝を張った下へ来ると、幸いにも放牧の牛が一匹、河童の往〔ゆ〕く先へ立ちふさがりましたしかもそれは角〔つの〕の太い、目を血走らせた牡牛〔おうし〕なのです河童はこの牡牛を見ると、何か悲鳴をあげながら、ひときわ高い熊笹の中へもんどりを打つように飛び込みました僕は、――僕も「しめた」と思いましたから、いきなりそのあとへ追いすがりましたするとそこには僕の知らない穴でもあいていたのでしょう僕は滑〔なめ〕らかな河童の背中にやっと指先がさわったと思うと、たちまち深い闇〔やみ〕の中へまっさかさまに転げ落ちました。

が、我々人間の心はこういう危機一髪の際にも途方〔とほう〕もないことを考えるものです僕は「あっ」と思う拍子にあの上高地〔かみこうち〕の温泉宿のそばに「河童橋〔かっぱば し〕」という橋があるのを思い出しましたそれから、――それから先のことは覚えていません僕はただ目の前に稲妻〔いなずま〕に似たものを感じたぎり、いつの間〔ま〕にか正気〔しょうき〕を失っていました 二 そのうちにやっと気がついてみると、僕は仰向〔あおむ〕けに倒れたまま、大勢の河童にとり囲まれていましたのみならず太い嘴〔くちばし〕の上に鼻目金〔はなめがね〕をかけた河童が一匹、僕のそばへひざまずきながら、僕の胸へ聴診器を当てていましたその河童は僕が目をあいたのを見ると、僕に「静かに」という手真似〔てまね〕をし、それからだれか後ろにいる河童へ Quax, quax と声をかけましたするとどこからか河童が二匹、担架〔たんか〕を持って歩いてきました僕はこの担架にのせられたまま、大勢の河童の群がった中を静かに何町か進んでゆきました僕の両側に並んでいる町は少しも銀座通りと違いありませんやはり毛生欅〔ぶな〕の並み木のかげにいろいろの店が日除〔ひよ〕けを並べ、そのまた並み木にはさまれた道を自動車が何台も走っているのです。

やがて僕を載せた担架は細い横町〔よこちょう〕を曲ったと思うと、ある家〔うち〕の中へかつぎこまれましたそれは後〔のち〕に知ったところによれば、あの鼻目金をかけた河童の家、――チャックという医者の家だったのですチャックは僕を小ぎれいなベッドの上へ寝かせましたそれから何か透亮な水薬〔みずぐすり〕を一杯飲ませました僕はベッドの上に横たわったなり、チャックのするままになっていました実際また僕の体〔からだ〕はろくに身動きもできないほど、節々〔ふしぶし〕が痛んでいたのですから チャックは一日に二三度は必ず僕を診察にきましたまた三日に一度ぐらいは僕の最初に見かけた河童、――バッグという漁夫〔りょうし〕も尋ねてきました河童は我々人間が河童のことを知っているよりもはるかに人間のことを知っていますそれは我々人間が河童を捕獲することよりもずっと河童が人間を捕獲することが多いためでしょう捕獲というのは当たらないまでも、我々人間は僕の前にもたびたび河童の国へ来ているのですのみならず一生河童の国に住んでいたものも多かったのですなぜと言ってごらんなさい僕らはただ河童〔かっぱ〕ではない、人間であるという特権のために働かずに食っていられるのです。

現にバッグの話によれば、ある假设い道路工夫〔こうふ〕などはやはり偶然この国へ来た後〔のち〕、雌〔めす〕の河童を妻にめとり、死ぬまで住んでいたということですもっともそのまた雌の河童はこの国第一の美人だった上、夫の道路工夫をごまかすのにも妙をきわめていたということです 僕は一週間ばかりたった後、この国の法律の定めるところにより、「特別保護住民」としてチャックの隣に住むことになりました僕の家〔うち〕は小さい割にいかにも瀟洒〔しょうしゃ〕とできあがっていましたもちろんこの国の文明は我々人間の国の文明――少なくとも日末の文明などとあまり大差はありません往来に面した客間の隅〔すみ〕には小さいピアノが一台あり、それからまた壁には額縁〔がくぶち〕へ入れたエッティングなども懸〔かか〕っていましたただ肝腎〔かんじん〕の家をはじめ、テエブルや椅子〔いす〕の寸法も河童の身長に合わせてありますから、子どもの部屋〔へや〕に入れられ たようにそれだけは不便に思いました 僕はいつも日暮れがたになると、この部屋にチャックやバッグを迎え、河童の言葉を習いましたいや、彼らばかりではありません特別保護住民だった僕にだれも皆新奇心を持っていましたから、毎日血圧を調べてもらいに、わざわざチャックを呼び寄せるゲエルという硝子〔ガラス〕会社の社長などもやはりこの部屋へ顔を出したものです。

しかし最初の半月ほどの間に一番僕と親しくしたのはやはりあのバッグという漁夫〔りょうし〕だったのです ある生暖〔なまあたた〕かい日の暮れです僕はこの部屋のテエブルを中に漁夫のバッグと向かい合っていましたするとバッグはどう思ったか、急に黙ってしまった上、大きい目をいっそう大きくしてじっと僕を見つめました僕はもちろん妙に思いましたから、「Quax, Bag, quo quel, quan?」と言いましたこれは日末語に翻訳すれば、「おい、バッグ、どうしたんだ」ということですが、バッグは返事をしませんのみならずいきなり立ち上がると、べろりと舌を出したなり、ちょうど蛙〔かえる〕の跳〔は〕ねるように飛びかかる気色〔けしき〕さえ示しました僕はいよいよ無気味になり、そっと椅子〔いす〕から立ち上がると、一足〔いっそく〕飛びに戸口へ飛び出そうとしましたちょうどそこへ顔を出したのは幸いにも医者のチャックです 「こら、バッグ、何をしているのだ?」 チャックは鼻目金〔はなめがね〕をかけたまま、こういうバッグ[#「バッグ」は底末では「バック」]をにらみつけましたするとバッグは恐れいったとみえ、何度も頭へ手をやりながら、こう言ってチャックにあやまるのです。

「どうもまことに相〔あい〕すみません実はこの旦那〔だんな〕の気味悪がるのがおもしろかったものですから、つい調子に乗って悪戯〔いたずら〕をしたのです。

下载提示
相似文档
正为您匹配相似的精品文档